現在、最も欲しいものといえば。
なんと言ってもブライアン・フリーマントルの
『再び消されかけた男』
である。
実に経済的な人間であるなあ、自分。
先だって、某書店で見かけた
『消されかけた男』
を読んだ。
フリーマントル初期のシリーズ物の第一作目である。
その名もチャーリー・マフィンシリーズ。
英国情報部の凄腕諜報員にしてさえない外見の中年男が主人公である。
新潮文庫から出ている翻訳物で、日本での初版が昭和54年というからもう三十年近く前の作品となる。
スパイ物、エスピオナージュといえばイギリス。
不思議と彼の国には第一人者がズラリ勢ぞろいしている。
当方の知っているところで言えば旧くはバカン、アンブラーからル・カレ、デイトン、フリーマントルなど、まさに枚挙に暇が無い。
やはりお国柄、というものか?
産業革命から名誉ある孤立を経て1900年代初頭まで。
世界の王として君臨していただけあり、諜報というものに対する認識というものは血液にまで刷り込まれているのかも知れない。
さて。
三十年、である。
うろ覚えながらたしかフリーマントルがこの
『消されかけた男』
を執筆し、彼の国で出版されたのが六十年代半ばであったかと記憶している。
どうだったかな?
そう考えると四十年である。
さすがに作中の時代背景は冷戦真っ只中。
深刻な東西対立も絶好調の時代である。
東側の崩壊に伴い、諜報活動というものも随分と移ろっている。
現在”スパイ”等という単語は死語と化しつつあり、諜報の舞台は単身敵国へ乗り込み血と泥にまみれながら情報を探り出すスパイ活動から、一流ホテルの貴賓室で立派なスーツを着て目ん玉飛び出るほど高いワインをすすりながらカードゲームを遊ぶように手の内を明かしあう所謂外交的な情報交換というものにシフトしつつあるが、それではスパイ小説としてはどうやっても面白くはならないのである。
現実として、この小説の中でも、そういった体制にシフトしつつある。
そんな中で、旧いタイプの凄腕諜報員として、上司には煙たがられ下のものには小馬鹿にされる風采の上がらぬチャーリー・マフィン君がある意味八面六臂の大活躍をする、というのがこのお話の筋である。
今までフリーマントルの作品は読んだ事が無かったが。
手に汗握るスリルあり。
作中にちりばめられた伏線あり。
終結に向けて収束していきそして大どんでん返し、と。
一個のエンターテイメントとして十分におなか一杯になる事うけあいである。
あっという間に読み終えて。
ついでにもう一回読み返して満足して。
続き物という事で次の
『再び消されかけた男』
とその続きを買いに札幌駅横の紀伊国屋へ買いに行ったのだが。
無いのである。
その脚で駅構内の弘栄堂に行ったがダメ。
大丸上の三省堂も×。
ステラプレイスの旭屋書店も×。
その後アテネ書房→紀伊国屋オーロラ地下→リーブルなにわ→文教堂ロビンソン上と全敗の体たらくである。
八戦八敗であった。
これが馬ならコンビーフ間近であろう。
ひょっとして絶版・・・?
ネットで調べてみたがアマゾンのマーケットプレイス以外全滅である。
その後の
『呼び出された男』
『罠にかけられた男』
『追い詰められた男』
『亡命者はモスクワを目指す』
『暗殺者を愛した女』
『狙撃』
『報復』(上、下)
『流出』(上、下)
『待たれていた男』(上、下)
『城壁に手をかけた男』(上、下)
などはワリカシどこでも見かけるのだが。
なぜだかこの
『再び消されかけた男』
は見当たらないのである。
どうにも第二巻だけ吹っ飛ばして読むのも業腹であり。
現在鋭意捜索中である。
はてさて、アマゾンで取り寄せるのがいいのかどうか・・・。
古本文庫屋さんも現在休止中だし。
待ってれば再版されそうな気もするがなあ。
まあ、とりあえず知り合いの店員さんにでも掛け合ってみようか。
そんな事を考える、冷え込み始めた今日この頃である。
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