日曜日の深夜、近所のコンビニまで買い物に出かけた。
これは、そこで出くわした恐ろしいお話である。
いくつかの買い物を済ませ、レジに向かった私である。
前には二人ほど並んでおり、いくらか待たねばならないようだ。
何気に財布を確認すると、中には五千円札一枚と千円札一枚。
そろそろ実弾の補給が必要だが。
しかし、給料日まであと一週間ほどだしなあ。
いすれにせよ、おろさなければならんのは一緒だが、財布に入れると入れただけ遣ってしまう悪癖もある。
ここは、この六千円で今週乗り切ってみようかなとの思いが胸にわくが。
電子マネーはまだ多少なり入っているし、問題はない、はず、だが。
ただ、なんかあったときに恥ずかしいのだよな。
たとえば、オヤジ狩りに遭ったりしたとき
「オヤジィ!なんで財布に500円しか入ってねンだよ!」
とか言われてボコられたりね?
道行く人のかわいそうな人を見る目が痛すぎるぅ。
まあいいや。
逆にね、チャンスだと思うのがいいな?
オヤジ狩り狩り、みたいなね。
財布の中身を増やすチャンスにね、したいと。
まだまだ枯れてないな、自分!
と、そこまで考えてニヤニヤしたときに、レジがいっこうに進んでいないことを察知する。
見ると、眼前ですごい光景が繰り広げられていたのである。
並んでいた先頭は外国人である。
アジア系、中国、台湾、韓国?
韓国人は、三度の飯よりカップめんが好きという話を聞いたことがあるので、おそらく違うだろう。
私が目撃した光景とは、そんな先頭の彼が、買ったカップ焼きそば(北海道でしか売っていないアレと、もう一つはUFO)にレジ横のポットにて湯を入れているシーンである。
そうそう、まず、ガワのビニールを剝いでね。
そして、おもむろに湯切り口のシールをベリッと剝いでね。
え?
そうしておいて、湯切り口のあのシマシマのところからね、こう、お湯を注ぎ入れて・・・。
流石にそこでレジの店員さんが突っ込みを入れた。
いやいや、そりゃ突っ込むわ。
だってお湯ダバダバこぼれてんじゃん。
おそらくは薄野住人だと思われる前の小粋なおねいちゃんも、流石に目を丸くしている。
店員さんが苦笑いしながらティッシュでこぼれたお湯をふき取り、そうして
「いやコレな、こうやってな・・・」
と、カップ焼きそばの作り方伝授タイムに突入である。
馬鹿だなあ。
しかも、言葉全然通じてないし!
始めは何とかコミュニケーションとろうとしてた店員さんだが、見切りも早く黙々と焼きそばを作る。
湯切り口の反対側を開けてお湯に沈んでいたかやくと中華スープとソースを取り出し、かやくを開けて投入する。
しかし、この一連の動きの間に、例の外国人の彼が取った行動がまた凄い。
なんと彼、もう一つのUFOのガワを破り、またもや湯切り口のシールを『ビリッ!』と剝いだのである。
「ちょっ!」
店員さんの口からその言葉が漏れる!
うわあ。
「いやいや、だからそれ剥がさないでさ」
言葉通じないのにね?結構テンパってるな。
まあ、どんどん列長くなってるしな、そうこうしている間に。
そうして彼の手からUFOをもぎ取り、開け口あけてソースを取り出した店員さんを尻目に、彼は更なる惨劇を引き起こす!
なんと、ソースをな?
一寸だけお湯の入った焼き弁のほうにさ、おもむろにビッとはじっこ破って投入したのである。
何だそれえ?
もうわかんないなら何もすんなよと言いたい。
店員さんも
「うわこれどうすんの?」
とか言ってるし。声に出てるよ。
前のおねいちゃんなんて下向いて震えてるし!
後ろのカップル客の男のほうなんてもう爆笑してるし。
女の子のほうはうわーって顔してるしさ。
何このカオス空間。
そこで外国人の彼の叫びがまた振るっている。
「ワカンナイヨ!コンナノワカンナイヨ!」
もうグッダグダじゃねーか。
その後、もういいから何もすんなと言ってしまった店員さん、その気迫に押されたのか、おとなしくなる彼を尻目に両方にお湯を入れ袋につめて満面の笑顔で
「アリガトウゴザイマシター!」
と、見事に放逐した次第であった。
「大変だったねえ」
そう声をかけると、店員さん、やっぱり苦笑いを浮かべながら
「ええ、まあ」
と返事をした後で
「あれ、絶対湯切りしないでそのまま食べますよね?」
と、疲れたようにつぶやいた言葉になぜだか妙に納得してしまった私であった。
ひどい惨劇もあったものであるな。
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