冷えるなぁ。
雪も降るしな、週末は多少暖かかったが、今週入ってからはこんな日が繋がっているのである。
まさしく三寒四温である。
温い、とおもえば寒くなり。
春への通過儀礼だと思うしかないか。
春と言えば、最近はタイトルに『新生活』とついた広告メールが多くなったな。
大学なんかの合格発も本番だし、ここ北海道においては季節の上では足踏みの春も、暦の上では順調に歩度を進めているようである。
昨日は啓蟄、そして先週に何よりも暦の上での春を感じさせるイベント、桃の節句があった訳であるが。
実を言うと当方、あの”桜餅”と言う奴が大好きなのである。
とても。
いいですよね、桜餅。
もっちりつぶつぶの道明寺であんこ包んで、それを包む桜の葉の塩漬けはしょっぱさも香りもベリグーであります。
たまらねえな、ハアハア。
というわけで今年も桃の節句とは全く関係の無いおっさんである当方も、一人家でコンビニで買ってきた桜餅を山積みにして玄米茶をすすりながらひなまつりパーティーと洒落込んだわけである。
立派な桜餅ジャンキーの出来上がりだ。
まあ、第三者がみれば相当に”うわー”な光景ではあるな?
通報されても文句は言えまい。
さて、そんな幸せな桃の節句も終了した先週末のこと。
近所の本屋を冷やかした後、ふらりふらりと散策していた暇人な当方である。
そんな折、以前から一度入ってみようと思っていた和菓子屋の前を通りかかった。
そう、以前から気にはなっていたのだが。
なぜに入らなかったかといえば、当方の動線からいささか外れていて忘れていたことが一つ、もう一つはそのお店、なかなかに入りづらいアゥラを醸していたと、その二点が理由として挙げられる。
入りづらい。
これはごく個人的な定義の問題である。
おっさんの癖に案外シャイなところのある草食動物である当方、入りづらいといえばまあ、近頃流行りのOL御用達みたいな、どっから入ったらいいかわからぬようなオサレ喫茶店なんかもう絶対無理だよな?
このあたりが筆頭だろう。
しかしこの問題の和菓子屋、そんな感じでは全く無い。
なんというか、古びている。
歴史を感じさせるとかそういったものではない。
寒々しく、しみったれた戦後昭和演歌な世界と言えばいいだろうか。
なんともやりきれない空気が漂っているわけだ。
気まぐれでそんなお店に首を突っ込んだ当方である。
甘党バンザイ!だな。
店内は当然電気なんかついていません。
薄暗い。そして寒い。
暖房も入っていないようだ。
店内の床はといえばコンクリート打ちっぱなしの三和土みたなっていて、寒々しさがさらに倍である。
そして店内には当然のようにだれもいない。
・・・・本当に営業中なのか、ここ。
ちょっとだけ心配になったとか。
ざっと店内を見回すとなんだか見たことの無い饅頭みたいな菓子や個包装されて正体のわからない何かがズラリとケースに入って並んでいる。
と、「いらっしゃいませ」いいながらおばあちゃんが出てきた。
軽く「どうも」と会釈をし、商品を吟味してゆく。
まあ、一見さんである、大福でもあればいくつか買って店のあたりをつけようと見回すが、どうやら大福は置いていない様子。
代わりといってはなんだが、桜餅を見つけた。
をや?桃の節句は過去の話だったような・・・。
まあいいや、ジャンキーの血が騒いだ。
コンビニなんかで扱っているものよりぽってりしており、一回り大きいようだ。
桜の葉の塩漬けも一枚一枚しっかりしており、変にねじけたような感じも無く、いいものを使っているのが伺われる。
「じゃあ、この桜餅を三つ、それとそちらのすあまかな?それを二つ」
と、おばあさんが
「桜餅は焼いたのと普通のがありますが、どちらになさいますか」
とか言う。
妬いたの?
誤変換が頭をよぎる。
やきもちさんか、こいつぅ!
イカレヤロウである、病と言っていいだろう。
とりあえずこっちへ帰ってきて、焼いたの?と首を捻る。
桜餅の焼いたの、聴いた事がない。
と、ケース内の桜餅の隣りにあるなんだか薄い皮みたいなのにあんこを挟んだ形状のものをおばあさんが指差して。
ほーほー、それが”焼いたの”ですか。
「それじゃあ、そっちの”焼いたの”とやらを赤白一つずつ、そして普通のやつを一つ、あとすあま二つで」
これで600円程度の買い物である。
まあ、確かにコンビニなんかに比べるとちょとだけ高いか。
無駄遣い大好き人間の当方にとっては、むしろテンション上がるんだがな?
さて、買った桜餅とすあまを抱えるように帰宅して。
さっそく煎茶を入れて焼いたのとやらにチャレンジしてみた。
おっ、桜の葉のおかげか確かに桜餅ではあるが、さっくりしていてなかなか美味い。
中の餡も一味違う、やや甘味が強くて懐かしい味だ。
普通の桜餅もやはりこの間食ったコンビニのやつよりもすっとおいしいな。
道明寺がよりもっちりして、歯を押し返す感触が実に心地よい。
すあまもこれを食べるとそのあたりのスーパーなんかで売ってる量産モノはちょっと喰えなくなってしまいそうだ。
とまあ、総合的に非常に満足できる味であった。
後日、同僚にこんな店があったよー、と主に”焼いたやつ”について報告すると。
「へー、珍しいね。北海道に焼いたの置いてある店なんかあるんだ」
と返された。
どうやらメジャーな存在らしいが、このあたりではなかなかお目にかかれないらしい。
どうやら彼も心惹かれたようだが、今週まだ桜餅売ってるかな?
売ってたらいくつか買って職場に差し入れるのもいいかな、と。
そんな風に新しくテリトリーに入った店を自慢する算段である。
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