パクリである。
たしか芥川だったか。
まあいいや。
この時期になると決まってある衝動に悩まされる。
その衝動とは・・・
”葡萄を漬けたい”
というものである。
葡萄と言ってもさまざまあるが、当方が漬けたいと身もだえしているのはいわゆる”山葡萄”というやつである。
田舎に住んでいた頃は家の裏手に行けば葡萄の蔓などいくらでもあったものだが。
さすがに現在住んでいる札幌ではそうはいかないようだ。
しかもアパート暮らしである。
保存に相応しい冷暗所などあろうはずも無い。
せっかく漬けた葡萄も腐らせてしまうのがオチである。
流し台も小さなものだし、とってきた葡萄を洗うのも一苦労である。
そんな諸々の理由で断念せざるを得ない状況が続いている。
ああ、田舎の山々が恋しいなあ。
さて、具体的に”葡萄を漬ける”とはどのようなことか?
そのあたりを説明せねばピンとこない方も多いであろう。
ここで説明フェイズである。
まず、用意するもの。
☆ 砂糖たくさん
☆ 程よい大きさの樽か甕
☆ 保存場所(冷暗所、蔵や地下ムロなどがあればgood)
これだけである。
こいつらを用意したらば葡萄のなってる山へGOである。
山の葡萄を狩り尽くす勢いで取ってきたら、次は葡萄を房から外す作業である。
これが中々に大変。
座りっぱなしでプチプチプチプチ・・・。
なかなか減らない葡萄の山を相手の格闘だ。
人生における苦悩や深い思索が頭に浮かんできそうなひと時である。
人によっては死にたくなったりするかも知れぬ。
踏みとどまってください。
一応果物なので、ムシさんやゴミ等がついていることもあるが、それらは出来るだけきれいに取り除いていく。
このあたり、おろそかにすると畢竟仕上がりにも差がつく。
かんしゃくなど起こさず、丁寧に行うべきである。
結構取ってきたと思っても、房を除けば案外無いものである。
後に残った葡萄の実をざっと水洗いする。
房を外しているので、処女を相手にするが如く、優しく扱うのが肝要である。
めぼしいゴミなどはあらかじめ取っているはずなので、軽く汚れを落とす程度でよい。
水から揚げた葡萄は笊などにあけ、水を切っておく。
水切りが済んだらいよいよ用意の樽の登場である。
ホームセンターなどで売っているプラスチックの樽で十分である。
まず、ざっと樽の底が隠れるくらい、葡萄を敷き詰める。
その後に砂糖を満遍なく振る。
分量はまあ目分量である。
ちょっと多いかな?というくらい振るのがいい。
そしてその作業を繰り返す。
葡萄、砂糖、葡萄、砂糖・・・。
それで終了である。
まあ、極々簡単なものである。
漬け込んだ後は軽くビニールなどをかぶせ、木蓋などをしておくと良い。
一応、糖があるのであたりに漂う天然酵母がそれなりの仕事をしてくれる。
これは腐敗を防ぐためにも必要なので、密閉はしないようにするのが重要である。
建前上はただよう酵母どもが”勝手に”やらかしたことなので、当方といたしましても汗顔の至りであり、非常に遺憾である。
とはいえ、多少醸したところでそれほどアルコールは高くはならないのでお子様も安心であるが・・・。
人工的なドライイーストなどの酵母を加えるわけでもないし、漬け込みの期間もせいぜいが二~三ヶ月程度なので、1%まで行かないであろう。
さて、漬け終わったら後は放置である。
きれいさっぱり存在を忘れ去るのがハードボイルドなやり方だ。
気にしすぎるのは無粋というものである。
後は運を天に任せるのが、良い。
で、雪の降る頃・・・。
お正月あたりにふと、そのときのことを思い出すわけだ。
「そういえば、秋に葡萄漬けたっけな」
葡萄樽を引っ張り出して蓋を開けるとあら不思議。
濃い紫色の液体でひたひたになっているという寸法である。
市販の葡萄ジュースなどとは比べ物にならぬ深い味わい。
ごくわずか、アルコールの香りがする。
そのまま行くのも良し。
水で、焼酎で、割って飲むのも良し。
タネとなった葡萄もそのままイケる。
やわらかく、デザートとしてもおいしいが、紅葉おろしの要領で大根おろしと合わせるのも結構ですな。
お菓子作りが好きな方にはいろいろなアイデアが湧きそうである。
というようなことを考え、身もだえする自分がいる。
あれは、いいものだ。
環境が整っている方には、ぜひ一度お試し頂きたい。
いずれ一軒家を購入する日でもきたら、毎年漬けてやるからな。
そんな野望に身を焦がす、この頃である。
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