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2008/1/13 人生における、雑感、ボヤキ、など。
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過日、機会あり、原作 藤沢周平、監督 山田洋次の”武士の一分”を見た。
中古屋で千円チョイで売られていたものだ。
近所のオバチャンが以前
「今日見に行ってきたんだけどね、面白かったよ」
とか言っていたのを思い出して、つい、手を出してしまったのだ。
ひどいものであった。
勘弁して欲しい、本当に。

自分は、藤沢周平氏が大好きである。別格である。
自分内では一段、高いところに鎮座ましましている。
それがあんなことになるなんて…。
陵辱といっても過言ではあるまい。
彼の監督、最近精力的に氏の作品を映画化しているようだが。
これを見ただけで、他の映画化作品なぞ意地でも見るか!という気分にさせられてしまった。

池波正太郎氏や柴田錬三郎氏などは、自分の作品が映像化されることを随分と嫌ったそうだ。
池波氏は、縁故を頼ってきたテレビマンに、やむなくドラマ化にOKを出したそうだ。
それでもやはり、出来ればこれ以上は作って欲しくなかったそうだ。
柴田氏にしても、池宮彰一郎氏がかつて映像の仕事をしていた当時、何とか映像化のお墨付きをもらおうとして苦労された話が氏のエッセイに出てくる。
曰く、すごい迫力であった、と。

確かに、武士の一分を見る限り、作家が映像化を嫌がるのも、分かる気がする。
おれはこんなもの書いていない、と。
自分が生み出したものが他人の手によって切ったり張ったり削ったり装飾過剰にされたりする。
仕事に矜持をもつ人であれば、その嫌悪感はまた格別だろう。
以前、田中芳樹が2次創作物にブチ切れたという話を聞いたことがある。
ケツの穴のちいせえ野郎だ、とか思っていてのだが。
こう考えるとそれもやむなしか、と考え直してしまう。

そも、どだい無理な話なのだ。
作家達は、映像にするために作品を書くわけではない。
自分の理想や考えを少しでも形にすべく、文章にするのである。
それに魅了された他人がどれほど知恵を絞って全能を傾けても。
下地となった原作を超えることなど出来ないのである。
文章、というものは。
嫌が応にも、読み手の想像力を掻き立てる。

自分が思うに、実在する美人の女性というものは、想像上における理想の女性というものを決して超えられないのである。
個々人には各々、嗜好というものがある。
背の高低、胸の大小、髪の長短、etc、etc…。
文章であれば、それを表す言葉は一言”美人”であればよい。
それだけで読者はすぐに、自分の理想の美人像を思い描く。
しかし、映像になってしまうとどうしても美人に一人の役者が配されることとなる。
その時点で既に、かけ離れてしまうのである。
池波氏の鬼平犯科帳の一篇に、”すごい奴”という登場人物があらわれる。
井関録之助の暗殺を請け負った殺し屋であるのだが。
すごい奴という以外、名前、顔立ち、体型にいたるまで、パーソナルデータの全てが描写されていない。
これなどは実に小説的な技法であるといえる。

逆に、映像的なスピード感のある文章をかかれる人もいる。
高野和明氏の文章は実に映像的で、エンターテイメントの鏡といってもよい。
余韻も残らないし、あとも引かないが。
それはそれでいいと思う。
しかし、自分に於いては、藤沢周平氏といわれると、どうしても原作ありきになってしまう。
原作無しの、映画の単体としてみれば、まあ、見られなくは、無い、のかな?
せいぜいがギリギリ許容範囲といったところであるが。

今後、藤沢氏原作の映画を見ることなどもう無いであろうが。
出来うるならば、これ以上原作を汚すのはやめてもらいたいものだ。
最近では、たそがれ清兵衛、蝉しぐれ、隠し剣鬼の爪なども映画化されているようであるが、どれも良い作品ばかりである。
ファンの方々には申し訳ないが、どうにも腹が立って仕方が無いのである。

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