忍者ブログ
2008/1/13 人生における、雑感、ボヤキ、など。
[35] [34] [33] [32] [31] [30] [29] [28] [27] [26] [25]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

自分はどうやら徹底的に彼女のピンチに縁があるらしく。
彼女史上最大の危機のときも、発見する事になる。
おかげで嫌われっぱなしだというのに。

彼女が家にいつくようになって数年がたち。
自分が高校生のころであった。
彼女も幾度かの出産を経験し、女として脂ののり切った時期である。
出産のたびに我が家はおおさわぎであった。
このままでは家が猫屋敷になってしまうと危惧した父と母。
とはいえせっかく生まれた命、むげに殺すも我、忍びず。
せいぜい知り合いのツテをたどって飼い主探しに奔走したものである。
自分も学校などで
「猫は良いぞー、懐くと最高にかわいいぞー」
などと、懐かれた事も無いのに猫なで声で勧誘の日々。
その甲斐あってか、その事件がおきるまでの彼女の仔らは、無事、新しい飼い主の下へ引き取られたのである。

彼女の腹がずいぶんと大きくなってきたある日。
ふいっと姿が消えた。
それに関してはいつもの事、彼女の気の向いたところで出産をするのである。
が、このときばかりはいささか様子が異なった。
前述の通り、家には職業柄、幾つもの納屋が存在する。
現状では屋根の在る小屋は十ほどであろうか?
出産が終わると、そのうちのどこかから子猫の鳴き声がするので、どこで産んだかはすぐにわかるのであるが。
そのときばかりはいっかな待てども泣き声がしてこない。
さすがに心配になった我々は、虱潰しに各小屋をあたってゆく事になった。
が、普段整頓というものを知らぬ父の事、それぞれの小屋はまさに魔窟。
オイルの空き缶が無秩序に積み上げられていたり、工具箱がそこいらに放り出して積み上げられていたり、何が入っているのかわからぬダンボール箱が山になっていたりと、枚挙に暇が無い。
探索も畢竟、困難を極めることとなる。
探索初日は空振り、二日目も発見できず、じりじりとした日が過ぎてゆく。
そして三日目の朝、早起きして登校前に探索していた自分が彼女を発見する事になる。
奇しくもそこは、彼女が生まれた場所であった。
薄暗い材木の山の下、懐中電灯を当てて彼女の名前を呼ぶと、かすかながら応えの声。
材木の山を崩し、無事、衰弱した彼女を救い出す事に成功した。

彼女のいたところには死んだ子猫が二匹。
そして、彼女の膣の部分には、おそらく死んでいるであろう子猫のなきがらが頭だけ出ていた。
すべてを理解した自分は、ぐずる母の尻を引っぱたき車を出させ、彼女を動物病院へ連れてゆくこととした。
もちろん、実家の在る町には、動物病院などお洒落なものは存在しない。
ざっと調べたところ、存在するのは近場では自分の通っている高校の在る街である。
車で一時間弱はかかる。
朝っぱらから医者を電話でたたき起こし、すぐにそちらに向かう旨を告げ。
「診察は十時からです」
などとほざく医者をなだめすかして、最後はせいぜいドスの利いた声で脅しつけ。
制服に着替えて彼女をタオルを敷いたダンボールに入れ車に乗せ、病院に運び処置をしてもらう事が出来た。
思い出すだに、消えてなくなってしまいたいような蛮行である。
お医者さん、ゴメンナサイ。

役人のような神経質な面を想像していたお医者さんだが。
初老の気のよさそうな人であった。
無理を言ったにも関らず、麻酔の間、こちらの話を聞いてくれて。
お医者さんの提案で、処置と同時に彼女に避妊手術を施す事にした。
母は二つ返事で了承、こうして彼女は無事、命永らえる事になったのである。
…或いは、こちらの顔などもう見たくなかったのであろうか?
思い返したくはないが思い返せば、ただのヤクザのクレーマーである。
うわー。ほんと、すんません。

ここまで苦労させられたわけであるから、こちらの思い入れもそれなりであるのだが。
やはり彼女は懐かないまま。
いまではいいおばあちゃんになって、家で寝たり起きたりの生活をしているようだ。
正月などで実家に帰ったりすると、たいてい姉夫婦なども来ている。
姉夫婦には年子の女の子が2人いるので、彼女らがいるときは大抵隠れているのだが。
彼女らがいなくなると、のっそりと薪ストーブのそばにきて寝そべる。
自分がいてもお構いなしなので、どうやら年月とともに彼女もずいぶんと老成した事がわかる。
ある意味、枯淡の境地、とでも言おうか。
そんなときは彼女を見つめ
「いいか、俺はな、お前の命を何度か救ってやった大恩人なんだよ。わかってんのか?」
などと話し掛ける。
だが、彼女は煩わしそうに一声鳴くと瞑目し、ストーブのそばに大の字で寝そべるのみだ。
そんな姿を、実に好ましく思う自分である。

PR

コメント


コメントフォーム
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード
  Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字


トラックバック
この記事にトラックバックする:


忍者ブログ [PR]
カレンダー
04 2024/05 06
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
最新コメント
[12/17 TathoathSog]
[12/17 AlgossysoolvE]
[08/18 革命]
[08/13 NONAME]
[06/04 NONAME]
最新トラックバック
プロフィール
HN:
ontai
性別:
男性
趣味:
読書 睡眠 ゲーム
バーコード
ブログ内検索
カウンター
お天気情報