さて、ダンマス考その2である。
現在主流ののRPGとは別系統の進化を果たしたRPG。
それが、ダンジョンマスター(以下DM)である。
DMには、斬新で画期的な数々のファクターが取り入れられている。
その中でも最も新しく、今なお新しいと感じられるもの、それはリアルタイムRPGであることだ。
現在、リアルタイムバトルをうたうRPGは山ほどあるが、ここまで徹底したリアルタイムは正直お目にかかったことが無い。
それというのも、バトルだけではなく、全てがリアルタイムであるからだ。
DMはダンジョン踏破型3DRPGである。
とはいえ、当時、3D技術などというものは存在しない。
このあたりはウィズのダンジョンを思い浮かべてもらえばわかるが、紙芝居型のなんちゃって3D風ダンジョンといえばわかりが良いだろうか?
主人公達はこの奥深いダンジョンに放り出され、最初から最後までこのダンジョンで生活する事となる。
そう、生活である。
このゲームの最も新しく、特異である点が、この圧倒的な生活感を持つというところにある。
擬似的とはいえ、かれらも人間(生物?)である。
ダンジョン内を歩き回ればのども渇くし腹も減る。
腹が減りすぎれば餓死するし、のどが渇きすぎれば渇死してしまう。
そうならないためには、ダンジョン内を水と食料を求めて動き回らねばならない。
場合によっては敵を堵殺し、その肉を回収することも辞さぬ、欠食児童軍団なのである。
幸いにして(?)迷宮内にはそれなりに食料が落ちている。
パンであったりりんごであったり、チーズであったりトウモロコシであったり、或いは出自の怪しいなにかの肉塊なんかだったりするものがそこいらに転がっている。
見つければ回収し、腹が減ればそれをむさぼり食らう。
飲み食いするときの音もなにやらリアルである。
とはいえ、基本迷宮内に落ちている食料は有限である。
食べ過ぎても意味は無いので、余剰食糧は大事に保管しておく必要もある。
有限といえば、迷宮内に落ちているあらゆるアイテムはほぼ全てが基本有限である。
DMには便利なお店などは無く、全てを迷宮内を歩き回って回収、或いは敵を倒して調達しなければならない。
剣や盾、衣類などの装備品から食料、変わったところではフラスコや爆弾、たいまつ、用途の良くわからないガラクタ類に至るまで全てが有限である。
そう考えると、迷宮内で見つけたものは、なかなか捨てられないのだが、彼らがいくら猛者であるとはいえ、持って歩ける重量には限界がある。
無理をすれば運べるが、動きが極端に遅くなったり、歩くだけでダメージを受けたりして得策ではない。
が、置き捨てていくのもなにやら悔しい。
そんなときには物品貯蔵庫である。
これはDMプレイヤーの誰もが一度は通る道だが(そんな事はないという人も中にはいるだろうが・・・)迷宮内のわかりやすい場所で、なおかつ部屋になっているようなところにアイテムを集めて武器庫や食料庫や宝物庫を作ったりするのである。
特に、扉なんかがついた部屋があれば雰囲気があってモアベターである。
こんな何気ないことも楽しいのがDMである。
歩けばいくらでも敵が湧き出てくるRPGとは違い、基本的に、敵はマップ上に配置されているのみである。
エンカウントというものは存在しない。
ジェネレーターというものは存在し、何らかの条件によってその地点から敵が湧き出してくる事はあるが、多くの敵は倒すとそれっきりである。
当然、敵も動き回る。
こちらをひたすらに目指してくるものもあれば、逃げ回るものもある。
目視で接近してくる敵もあるし、それ以外の何らかの感覚でこちらの居場所を割り出してくる敵もある。
壁一枚隔てた向こうがわに敵が存在し、足音だけが聞こえてきたりするし、いつのまにか背後に回りこまれて「ギャー!」とか叫ばれてなまらびっくりという事もままあるのだ。
多くの魔物には足音がある。
ダダダという走り回る音であったり、ズルズルと何かを引きずるような音であったり、ガッシャンガッシャン鎧を鳴らす音だったりする。
それらの音は敵との距離によって大きくなったり小さくなったりし、曲がり角の向こうがわにいる敵の姿の見えぬ、しかし足音だけが聞こえてくる様は、正直、えもいわれぬ不気味さを誘うものである。
この音、SEこそがDMにおけるこだわりであり、BGMのない(スーファミ版では所々にBGMの鳴る個所があった。それもまたなんとも言えず怖かったものである)本作ではあるが、全容量の6~70%ほどがSEに割り当てられたものだったというのは実に有名な話である。
否も応も無くプレイヤーの想像力を掻き立てる、心憎い演出である。
というように、まさにプレイヤーがダンジョン内で生活を行う、DMとはそんなゲームなのである。
『あなたのお部屋で居ながらにしてダンジョンライフ!』
・・・深夜枠の怪しい通販番組ならばこのようなコピーを叫んでいるであろう事、請け合いである。
繰り返すが、ここまでの人生において、これほどの生活感をもったRPGには出会ったことがない。
恐らくは、ウィズなんかよりもDMのほうが、現在のユーザーには間口が広いのではなかろうか?
一度綺麗に改修し、書き起こし直せばフルプライスで出しても十分に商売になりそうなゲームである。
このDMというRPGは、ウィズの発売より六年後、アメリカでリリースされたゲームである。
RPGの多様な可能性を示したと言う意味合いにおいて、本作をRPGにおける重要なターニングポイント、或いは革命的な作品と賞する向きもある。
実際、その後のウィズの続編などにも多大な影響を与えたようでもあるし、リアルタイムという言葉はここから始まったといっても過言ではない。
一つの時代を切り開いた異端の作品、それがDMである。
が、しかし。
影響は与えたかも知れぬが、残念ながらRPGはこの方向には進化をしなかったといえる。
いや、出来なかった、であろうか。
それというのも、あまりに一個のRPGとして、DMは完成されすぎていた、というのが当方の考えである。
DMもまた、ウィズに影響を与えられて世に現れた作品である事は間違いない。
とはいえ、現状における主流であるドラクエ型のRPGがウィズを下敷きにしてそこに壮大な世界とドラマを与えたのに対し、DMは全く真逆の方向に進化してしまったのである。
世界観においてはより狭く、一個のダンジョンというものに完全に集約し、システムにおいてはもはやウィズの名残すら感じられないほどの新しさ、いやさ完全破壊というに等しいシロモノと相成っている。
この方面の作品をあるいはほかのクリエーターが制作したとしても、所詮はDMの二番煎じといわれるのがオチなほどに、システムとして完成され尽くし、純化されてしまっているのである。
故に多くのクリエーターは、其処に絶大な魅力を感じながらもその方面に足を踏み入れる事が出来ない。
前述したとおり、もし現在、DMを完全3D化し、モンスターやダンジョンを新たに書き起こしてリニューアル作品を作れば、恐らくはこの作品を知らない若い世代のユーザーにもあたりまえの様に受け入れられてしまうだろう。
それこそが、このDMという作品の偉大さの表出であり、また不幸でもあるのだろうと感じる。
これもまた、ある意味早々に進化の袋小路に踏み入れてしまった作品ということになるのだろうか?
DMの血統を受け継ぐRPGはそう多くない。
システムという面においては多くのRPGに多大な影響を与えはしたが、続編や同様のタイプのRPGは数えるほどしかない。
それこそスカルキープや(これを発表して開発元であるFTL SOFTWAREが潰れた)カオスストライクスバック(CSB)、ダンジョンマスターネクサスやセロンズクエストと、まさに指折り数えるほどしか存在しない。
ネクサスなんかは上記の様なリニューアル作品であり、その完成度は他の追随を許さぬ出来栄えではあった。
360°回転する完全3Dマップで、モンスターも完全に書き直され、実に美しく、それでいてDM本来の世界観を壊さぬ良いRPGである。
が、残念ながら開発元にとってはこれは黒歴史だったのだろう。
何せ、サターンという閉じたハードウェアでの作品でありながら、重篤なバグを連発してしまったのだから・・・。
いや、当方はおいしく頂かせてもらったが。
それにしてもやっちゃった感は漂うものである。
はぁ・・・。
どっか完全新作で作ってくれねえかな。
現在のコンシューマーの技術やスペックであんなの作ったらスゲーもんが出来そうなのになあ。
二番煎じだろうが何だろうがかまわんのだがなあ・・・。
あるいはモンハンなんかに近いかもわからんね。
というわけで、往古を偲びたい方、あるいは俺もダンジョンライフに参戦するぜしたいぜ、という方のために、このようなステキなものが存在する。
その名も『ダンジョンマスタークローン』
海を渡った向こう側、彼の帝国のどこぞでジョージ君という方が作ってくれた名品である。
オリジナルとは多少の違いがあるが、それでも出来うる限り忠実に再現されたDMは圧巻の一言である。
現在もなお進化しつづけているそれは、まさにわれわれダンマスジャンキーにとっては無くてはならぬ神のごとき存在だ。
おいおいジョージ、あんたすげえよ。
ありがとう、ありがとうジョージ。
というわけで、下のリンク先のページからダウンロードできます。↓↓↓↓
http://ragingmole.com/RTC/
※ご使用の際はひとつ、自己責任でおねがいします。
ゲーム内言語は英語であるが、まあ、中学生レベルの英語をマスターしていれば問題なかろう。
エディタもついているので、自作も可能な優れものである。
もうね、ジョージの方に足向けて寝られないや、ほんとに。
これで今日からあなたもダンジョンマスターだ!!
他にもJAVA版などがあるが、興味があったら探してみるのも良いだろう。
というわけで、二回にわたってお送りしたダンマス考であるが。
われわれダンマシストのほの暗いパトスの迸りを、いささかながらお伝えできたならば幸いである。
これを機に、ダンマス仲間が増えるといいなあ。
なかなか理解されぬ趣味で、当方、かなりのさびしん坊状態である。
鋭意、コンシューマーで作ってくれるところ大募集だ。
そんなことがあったらテレビも本体も買っちゃうよ。
ほ、ほんとだよ・・・?
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