ここ数ヶ月、映画から遠ざかる日々が続いていた。
別段、時間が無かったわけでもないのだが、なぜか見る気がしなかったのだ。
あるよね、そういう時って。
先週のお休みに久々に一本見たので、感想等。
Blood Work
あらすじ
FBIのプロファイラー、マッケーレブ。
かれは現在、コードキラーと呼ばれる連続殺人犯を追っている。
その日もコードキラーが現れた現場に駆けつけたマッケーレブであったが、彼を取り巻く記者たちの中に、血のついたスニーカーをはいた男を見つける。
その男を追いかけ、追い詰めたマッケーレブであったが、あと一歩のところで心臓発作を起こし、取り逃がしてしまう。
それから二年後・・・。
FBIを引退し、心臓移植を受けたマッケーレブの元に、一人の女性が現れる。
彼女はマッケーレブに移植された心臓の持ち主の姉だと名乗り、彼が今生きていられるのも妹が殺されたおかげだ、どうか殺人犯を探して欲しいと話を持ちかける。
徒手空拳のマッケーレブの捜査が始まった──。
ご存知、クリントイーストウッド監督主演の映画である。
彼の主演監督作品というと、思い出すのはスペース・カウボーイやミリオンダラー・ベイビーあたりか。
後者はアカデミー賞をいくつか取り、世上評価の高い作品であったが、当方は前者の方が圧倒的に好きである。
宇宙を夢見、そして時代がそれを許さなかった男たちの情熱、決して消えない埋み火の燃え上がる様を描いた名作であった。
残念ながら、世間の評価は低かったようであるが・・・。
コードキラーと呼ばれる正体不明の殺人鬼を取り逃がし、借り物の心臓で日々を埋め草の様に過ごすクリントと、その胸のうちにくすぶる炎の熱はスペース・カウボーイに通ずるところがあるように思う。
映画としてはまずまず面白いものであった。
二時間近くの長さの割にはだれるところも少なく、こう言ってはなんだが十分に鑑賞に堪え得る作品である。
ただ、惜しむらくは人間ドラマとしては良くまとまっているが、推理を含むサスペンスとしてみた場合、どうしても弱いと感じてしまう。
まず、犯人に近づいてゆく過程が駆け足の様に感じてしまった点。
これは、そこそこ尺のあるこの映画であっても、やはりドラマとサスペンスの二兎を得るのは難しかったのであろう。
論点や焦点がぼやけてしまった感じを受けた。
そして、至極簡単に犯人がわかってしまう点。
当方は見初めて三十分程度で犯人がわかってしまい、推理モノという意味では残念な結果であった。
ただ、そう云う決めうち的な見方も案外面白かったので、やはりドラマとしては評価ができるという事となろう。
そして何より気になったのは、伏線が今一つはっきりと回収されていない点。
途中で殺される容疑者兼被害者達は、果たして犯罪に関っていたのかどうか・・・。
関っていたような含みは持たせてあるが、この映画ではそれもはっきりしない。
どうにもむずむずするところである。
原作では恐らくはっきりと描かれているのだろうが・・・。
マイクル・コナリーの原作『我が心臓の痛み』でも買ってきて読んでみようかな・・・?
役者さんに関しては、無名の人が多いながらも良くまとまっていた印象。
ただ、どうにも女性陣がいささか受け付けなかった。
アンジェリカ・ヒューストンの演技は正直大袈裟で苦手。
逆にワンダ・デ・ジーザスの演技はいささか内向的というか、内側に向かいすぎていて物足りない印象を受けた。
唯一ティナ・リフォードの女刑事役だけがばっちり嵌まっていた。
しっかりと役柄を演りこなしつつ、見せ場はきっちり決める、いい演技であったと思う。
男性陣はジェフ・ダニエルズに圧倒された。
このひとも多芸といえば多芸だよね。
その壊れっぷりは見事の一言。
実に良い性格俳優ではあるが、そのあたりが今一つブレイクできない所以か?
それでも今回は見事な怪演であった。
役どころの勝利といえばアランゴ刑事役のポール・ロドリゲス。
いやな奴の役どころではあるが、どこか軽妙で憎めない。
クリントとの掛け合いや科白なしの立ち演技も決まっていて、なかなか見ていて飽きなかった。
クリントに関しては相変わらず。
まあ、らしいっちゃらしいが、それでも今回はより弱さを押し出した人間くさい演技ではあった。
というか、出だしの音楽がいいね。
うわー・・・いかにもクリント・イーストウッドキターという音楽である。
まあ、実際作品とあっているかどうかはまた別なのだが・・・。
まあ、このようにそれなりに面白い一本である。
機会があったらごらん下さい。
それなりには楽しめる事でしょう。
クリント分の補給にもってこいです。
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