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2008/1/13 人生における、雑感、ボヤキ、など。
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高校のときの国語科の教科書であったろうか。
教材として、太宰治の「富嶽百景」があった。

何年か前の夏のこと。
入院中の母を見舞った帰りであった。
なんとも、暑い日の夕方であったと記憶している。

病院の帰り道、大通り五丁目のベンチに座ってボーっと文庫を読んでいた。
確か、司馬遼太郎の「坂の上の雲」だったか。
近くの露店で買ったラムネなぞのみながら、である。
そんな時、観光客であろうか、二人連れの綺麗な女性が声を掛けてきた。
「すいませんが、写真をとってもらえませんか?」

不思議と、このように声を掛けられることが多い。
歩行中、道を尋ねられたりするのはしょっちゅうのことである。
別段、いいひとそうなオーラを出しているわけではない。
また、自分がいい人に見えるかと言われると、鏡を見る限り、どう考えても悪人面である。
まず、目がいけない。いささか目つきが悪すぎる。
若かりし頃など、この目つきの悪さと人より頭一つでかい身長のおかげでずいぶんと悪者や上級生に絡まれたものだ。
呼び出されてボコられたことも何度か。
こんなに草食なのに。
あと、笑顔がいけない。
妙に引きつってゆがんでいるような気がする。
笑顔がいい人をみると、思わずあこがれてしまうほどである。
世の中はなんとも不公平なものだ。
いささか愚痴のようになってしまったが、決して見知らぬ他人に頼られる容貌ではないと思うのである。

ちなみに自分は、デジカメ、などという便利グッズは持ち合わせたことが無い。
知り合いのものを借りて撮影したことも数えるほどである。
もちろん、取扱に熟練しているはずが無い。
そんな自分にデジカメを差し出していい笑顔で
”写真とって”
である。

私は、へどもどした。

まさに、このような表現がぴったりくる状況である。
まわりにはこんなに人がたくさんいるのに。
もっと暇そうなひとだってたくさんいるのに。
なぜ、よりにもよって自分に?
である。

しかし、むげに断ることもできず、結局は応じてしまう自分がいる。
デジカメをひねくりまわしながら。
さながら、新アイテムを渡されたお猿である。
「こ、ここを押せばいいんですね」
いささか、上ずっている。
取り繕った笑顔がゆがんでいるのがわかる。
そして、ファインダーをのぞくと取り澄ました百合の花二輪。
ここにおいて自分は、いつか読んだ太宰の気持ちがありありとわかってしまったのである。

自分が太宰になれないところは、結局ちゃんと写してしまったところ。
取り澄ました姿をみると、思わず
「後ろの噴水だけ写そうか」
などと、悪心は起きたが、草食にはどだい無理な注文である。

あちらは女転がしのプレイボーイ。
いっしょに死んでくれる女さえいる。
対してこちらは一度たりともモテたことも無い只の悪人面である。
なんだかむなしくなってその場を後にした。
夕日がとても赤かったのを覚えている。

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